「中止と順延の違い」や「フライングをしてしまうと具体的にどうなるのか」など、自身を持って答えられるでしょうか?ここでは、今さら聞けない中止・順延・フライングについて、分かりやすく解説します。
台風、強風、大雪などの悪天候や自然災害、その他レースに大きな影響を及ぼすことが発生して競技が続行できなくなった場合、中止もしくは順延となります。具体的にどうなるのかを細かく解説していきます。
中止には代替開催日がありませんが、順延は代替開催日が1日追加されます(順延になった場合は、当初の開催予定期間が1日伸びます)。
ただし順延は(同節内で)最大2日までと定められています。そのため、既に2日順延している状態でレースが続行できなくなった場合、その後は全て中止扱いとなります。
開催予定だったレースの半分以上が実施済の場合には中止となり、半分までいっていない場合は順延となります(ほとんどの場合、1日のレースは12レースか11レースなので実質的に6Rが終わっているかどうかが基準になります)。
中止・順延いずれの場合も、それまでのレースで獲得した賞金や点数は正式な記録となります。これなら1着を獲った直後に中止や順延になっても、レーサーとしては安心ですね!
投票受付が既に始まっていたが、中止・順延で行われなかったレースの舟券は全額返還されます(返還舟券の払い戻し期限は60日間)。
準優勝戦が実施できなかった場合、優勝戦は実施されず「優勝者無し」となります。稀なケースとして準優勝戦の3レース中、2レースが行われた所で中止となった場合等は各競艇場が定めている実施要綱に従います(実施要綱に定めが無ければ執行委員長の判断となります)。
優勝戦は最終日の最終レースですので7R以降で競技続行不可能となった場合、(順延は出来ず)中止となり優勝戦は行われません。そして「優勝者無し」で開催は終了します。この場合、全国モーターボート施行者協議会によると「賞金総額の60%を優勝戦の出場予定全員に按分(比例配分)する」との事です。なお(そもそも出走していないので当然ですが)出走数は加算されず点数も付きません。
ちなみに、優勝戦が6R以前で続行不可となった場合は、前述している通り順延になります(その節内で順延回数が2回未満の場合)。
順延すると開催日程が延びるので参加選手のスケジュールに影響が出そうですが、全国モーターボート施行者協議会では“順延された場合を想定してスケジュールを作りあっせん”していますので影響がほとんどありません。唯一のデメリットとしては、拘束期間が長くなってしまうことくらいでしょか(日当は出ます)。
フライングをしてしまった選手には厳しい罰則が待っています。実際にフライングをした選手はどうなってしまうのか、どういう影響を及ぼすのか等を解説していきます。
フライングをすると該当レースの舟券は全て返還されます(競艇は売上の25%が競艇場と施行者に入り、残りの75%が当たり舟券の払い戻しになる)。そして、フライングで返還が発生すると、売上が減り主催者である競艇場と施行者の取り分が減ってしまうわけです。
特に本命の選手がフライングしたり複数の艇がフライングをすると売上が極端に減ってしまい主催者に大損をさせてしまいます。そのため、「フライングをしたら、とにかく最初に主催者へ謝罪に行く」という選手もいるほどです。実力があり、舟券の人気がある選手は、また違ったプレッシャーの中スタートに望んでいるのかもしれません。
フライングの中でも“0.15秒以上(約1艇身分)早いフライングはきわめて悪質”とされ即日帰郷という罰則が適用される事になります。これをやってしまうと、その日の出場レースが終わると強制的に家に帰されます。選手は、その節で稼ぐはずの収入が無くなり主催者から猛烈に怒られた挙げ句、地元に帰れば選手会支部から呼び出しを受け、きついお叱りを受けます。
0.15秒未満のフライングならば、継続してレースに出場できますが同節内で2回のフライングをすると即日帰郷となってしまいます。そのため1度フライングを犯した選手は、以降のレースを慎重にならざるを得ません。慎重になれは好スタートも切れず、成績も上がりにくいという負のスパイラルに陥りがちです。
1回目のフライングは30日の出場停止です。フライングした選手は既にあっせんが決まっている節が終わったら出場停止期間に入ります。A級選手は月3回のあっせんで賞金が高いグレードレースにも出ており経済的に余裕がある選手が多いです。
しかしB2級選手は月1回、B1級選手(全レーサーの約半数がB1級)は月2回のあっせんのみ。出場レースも賞金の安い一般戦のため30日間の無収入は経済的に非常に厳しく、場合によってはアルバイトをする選手もいます。
休みが終わっても100走以内にフライングをすれば、今度は再訓練の実施と60日の出場停止を食らいます。しかし、それを恐れて安全なスタートばかりしていたら、どんどん勝率を下げてしまいます(勝率3.5を切ると引退勧告を受ける)。安全に行ったら勝率が下がる、しかしフライングしたら更に過酷な状況に追い詰められる。フライングは選手の精神力が試される正念場なのです。
半年毎に期という節目があり、フライング回数がリセットされます。このタイミングでようやくフライングという呪縛から解放されます。
レースでフライングをしてしまう原因は様々です。ここでは特に多いと思われる2つをご紹介します。それは「勝負をかけた時」と「他艇に合わせた時」です。
大レースの優勝戦などで勝てば数千万円の賞金という時、絶対に勝ちたいという思いから限界ぎりぎりのスタートを狙います。そしてその結果、フライングになってしまうというケースがあります。2001年、賞金王決定戦(優勝戦)での山崎智也選手のフライングがまさにそうだったと言えます。
自分のタイミングではなく、他艇に合わせてスタートした結果、道連れでフライングになってしまうケースもあります。分かりやすい例として2018年2月5日の宮島競艇場9Rのケースをご紹介します。
このレースは進入固定(枠番通りのコースに入ることが決まっているもの)でした。そのため、助走距離が十分に取れるインは圧倒的に有利となります。実際に1号艇、2号艇は普段では取れない後方のスタート位置を取りました。3号艇は艇を後ろに引きダッシュ勢に加わりました。また、天候はあいにくの雪で視界が不良でした。この時の心理状態をそれぞれの艇ごとに想像してみました。
1号艇 「インでこの後方位置はあまり経験ないな。それに雪で時計が見にくい。
6号艇はいつもの位置だから大丈夫だろう。ここは“6号艇に合わせる”か」
2号艇 「時計が見にくいな。距離標識が一番見やすい“6号艇に合わせたほうが安全”かな」
3号艇 「カドは取った。“外3艇の中で一番早いのに合わせる”ことにしよう。そうすれば俺が先まくりだ」
4号艇 「外の2艇を前に出したら俺は5着か6着だ。“外艇の早い方に合わせる”か」
5号艇 「6号艇は未勝利の新人か。“6号艇に合わせれば”抜かれることはないだろう」
6号艇 「早く1勝したい! 6コースは距離標識が一番見やすいから雪はチャンス!ここはスタートダッシュをかけて攻めよう」
助走が始まり6号艇はダッシュ。その6号艇のスタートに合わせた1~5号艇も6号艇と同じタイミングでスタート。しかし6号艇はフライング。そして合わせた他5艇含めた全艇がフライング。結果、全員が即日帰郷になりました。
いかがでしたでしょうか?少し競艇の内部事情が分かったのではないでしょうか。傍から見ているだけではなかなか気づかない部分も競艇にはたくさんあります。長年見ているとこういった気付きがあるので、みなさんもたまに違った角度から競艇を観戦してみてはいかがでしょうか?